US News 米国発ニュース
2023年11月7日
今年の米国の年末商戦は、売上の伸びが昨年より鈍化しそうだ。全米小売連盟 (NRF) は売上高が前年比3~4%増となるも、昨年の5.4%増を下回ると予測。
食品や燃料代の上昇や金利高が逆風となり、消費の減速が懸念されている。
NRFによると、2023年のホリデーシーズン (11~12月) の売上高の予測は前年比3~4%増の
9,573億~9,666億ドル (約144兆~145兆円)。
伸び率は新型コロナウイルス禍の外出制限で「巣ごもり需要」が急増した2020年の9.1%増、
コロナ禍後で消費意欲が高まった2021年の12.7%増、2022年の5.4%増を下回るとした。
物価高、金利上昇に加え、猶予されてきた学生ローンの返済が10月から再開され「家計を圧迫し、食料品の買い控えを
余儀なくされている」 (ロイター通信) ことも鈍化の背景にあるという。
一方、コロナ禍で拡大したインターネット通販などの売上高は7~9%増加すると予想した。
NRFのマシュー・シェイ会長は声明で「伸びが世界的大流行 (パンデミック) 前の水準に戻るのは驚くべきことではない」と指摘。
「全体的に見れば家計は引き続き良好で、消費意欲を支えるだろう」と強調した。
NRFによると、全米の都市部では集団略奪の被害にも見舞われている。
スーパーやアップルストアなど、小売り大手のチェーン店が凶悪化した窃盗犯に顧客と従業員の安全が脅かされ、営業を続けられなくなり、閉店も相次いでいる。
10月までに177ブランドの49%が「1年前に比べて万引犯が大幅に凶悪化した」という。
売上停滞の要因の一つに挙げられている。
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(2023年11月16日号掲載)
2023年11月7日
オープンAIは11月6日、対話型人工知能 (AI) 「チャットGPT」をベースにして開発者が目的別の様々な対話型ソフトを作れる新機能を発表した。特定のゲームのルールを教えたり、子どもに算数を教えたりする対話型ソフトを作り、共有する
ことなどが可能。
また、チャットGPTの基盤技術である言語モデルの最新版「GPT-4ターボ」も公表した。
米企業家のイーロン・マスク氏が率いるAI開発会社「x (エックス) AI」も新たな対話型AI
「Grok (グロック)」を米国で一部の利用者に限定して公開した。
マスク氏は自身がオーナーの米短文投稿サイトX (旧ツイッター) にこの対話型AIを組み込む考えも示すなど、関連の動きが活発化している。
オープンAIは初の開発者会議で公開した。
新機能を使えば対話型ソフトを「誰でも簡単に構築できる」と説明している。
アップルやグーグルのアプリ市場のように、開発者が作った様々な対話型ソフトを販売するサイト「GPTストア」も今月中に立ち上げることも明らかにした。
GPT-4ターボは300ページを超える文書を扱えるようになり、回答を音声で読み上げるのも可能。
今年4月までのデータで構築されているため、最近の事象に関する質問に答えられるという。
サム・アルトマン最高経営責任者 (CEO) は週間のユーザー数が約1億人に上っていると紹介し、「世界で最も広く使われているAIプラットフォームだ」と訴えた。
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(2023年11月16日号掲載)
2023年11月7日
米中両政府は、バイデン大統領と習近平 (しゅう・きんぺい) 国家主席による首脳会談を11月15日にサンフランシスコで開く方向で最終調整に入った。米政府高官が11月7日、共同通信などに明らかにした。
米中首脳の対面会談は1年ぶりとなる。
安全保障や経済などの分野で競争が激化する中、トップ同士の意思疎通により関係安定化を図る。
中国外務省の汪文斌 (おう・ぶんひん) 副報道局長は8日の記者会見で、会談日程には触れず「双方は障害を克服し、共通認識を増やし、成果を積み上げなければならない」と強調した。
米中間では偶発的な衝突を回避する仕組みづくりが急務となっており、米側は軍同士の対話再開を望んでいる。
台湾問題や米国の中国への半導体輸出規制など難題が山積しており、首脳会談が関係改善につながるかどうかは不透明だ。
首脳会談では気候変動など地球規模の課題で協力を図り、両国関係の安定化を目指す。
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘や、ロシアによるウクライナ侵攻についても話し合う。
核・ミサイル開発を強行する北朝鮮とロシアの軍事協力の動きや、中国が海洋進出を強める東・南シナ海情勢も議題に上る見通し。
サンフランシスコでは11月15~17日にアジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議が開かれ、バイデン氏は14日に現地入りする。
米中首脳の直接会談は昨年11月にインドネシア・バリ島で実施して以来。
当時、両首脳は意思疎通の強化で一致したが、米軍が米本土上空に飛来した中国の偵察気球を今年2月に撃墜し、関係が一気に冷却化した。
(2023年11月16日号掲載)
2023年11月7日
米大リーグ (MLB) の球団幹部らが集まるゼネラルマネジャー (GM) 会議が11月7日、アリゾナ州スコッツデールで始まり、エンゼルスからフリーエージェント (FA) となった大谷翔平 (おおたに・しょうへい) 選手と、日本プロ野球オリックスからポスティングシステムでメジャー移籍を目指す山本由伸 (やまもと・よしのぶ) 投手の2人に大きな関心が集まった。11月7日はア・リーグのGMが報道陣に対応し、マリナーズのジェリー・ディポト編成本部長は
「全30球団が彼に興味を持つと確信している」と、初めてFA市場に出た大谷選手の注目度の
高さに言及。
ブルージェイズのロス・アトキンスGMも「彼が自分たちのユニホームを着てプレーする姿を想像し、興奮しない球団はないだろう」と絶大な人気を強調した。
ワールドシリーズを制したレンジャーズのクリス・ヤングGMは「特定のFA選手にはコメントしない」と言葉を選びつつ「最高の選手。私が言えるのはそこまで」と語った。
山本投手にも高い評価が寄せられた。
ディポト氏は「類いまれな才能の持ち主。国際舞台の大舞台でプレーして日本でのキャリアも素晴らしい」、アトキンスGMも「チームにインパクトを与えられる能力を持っているのは明らか」と絶賛。
日本選手2人がストーブリーグの主役になっている。
幕開けた大谷争奪戦、決着は12月上旬メドか
大リーグで大谷選手の争奪戦がついに幕を開けた。
エンゼルスから自身初のFAとなった大谷選手は実力、人気とも最高峰。
メジャー公式サイトなどはFA選手のランキングで1位に格付けし、投打「二刀流」の行方がオフの最大の関心事だ。
11月6日米西部時間午後2時までは、大谷選手の所属球団エンゼルスだけが条件面を交えながら、規定学で1年契約を求める「クオリファイング・オファー (QO)」の交渉に臨んだ。
エ軍は大谷選手にQOを提示したと発表。
今季QOの規定額は2,032万5,000ドル (約30億5,000万円) で、メジャー公式サイトによると、大谷選手やパドレスからFAとなった先発左腕スネル投手ら7人が提示を受けた。
大型契約が見込める有力選手は拒否するのが通例で、総額5億ドル (約750億円) 超の史上最大規模の契約も見込まれる大谷選手は受諾しないとみられる。
選手がQOを拒否して別のチームと契約を結ぶと、旧所属球団には補償としてドラフト指名権が与えられる。
他球団との本格的な交渉は日本時間11月6日午後2時 (米西部時間) 以降となり、交渉が活発化する12月上旬のウインターミーティング (WM) がヤマ場となる。
昨年、ヤンキースでア・リーグ新記録の62本塁打を放ち、FAとなったジャッジ外野手はWM最終日の12月7日に再契約合意が報じられた。
大谷選手の動向はその後の移籍市場を大きく左右するだけに、12月の早い時期での決着が目安となりそう。
*Picture: © Conor P. Fitzgerald
(2023年11月16日号掲載)
2023年11月7日
来年11月の大統領選の前哨戦となったケンタッキー州知事選が11月7日に投開票され、民主党の現職アンディ・ビシア知事 (45) の勝利が確実になった。米メディアが報じた。
人工妊娠中絶の是非が争点で、中絶の権利を擁護する姿勢が評価された。
オハイオ州で同日実施された住民投票でも、中絶の権利を保障する州憲法改正が支持された。
民主党に追い風となった。
ケンタッキー州知事選では、共和党のトランプ前大統領が推薦した黒人のダニエル・キャメロン州司法長官 (37) は及ばなかった。
共和党支持の保守派が多い同州での敗北は、大統領返り咲きを目指すトランプ氏には打撃となる。
中絶の権利をめぐっては最高裁が昨年6月、中絶を憲法上の権利だと認めた1973年の判決を覆した。
世論調査では米国民の多くが権利を尊重すべきだと回答しており、民主党陣営は争点化を進めて攻勢をかける。
バージニア州でも議会選があり、民主党が下院の多数派を奪還。
共和党ホープの一人とされるグレン・ヤンキン知事にとって大きな痛手となった。
ビシア氏はキャメロン氏について、レイプや近親相姦 (そうかん) による妊娠を例外としない厳格な中絶規制を支持していたと指摘し、「被害者より強姦 (ごうかん) 犯に大きな権利を与えている」と批判。
キャメロン氏は妊娠15週より後の中絶を原則禁じる州法案にビシア氏が拒否権を行使し、胎児の生きる権利を奪ったと訴えていた。
CNNによると開票率91%で、ビシア氏の得票率が52.5%、キャメロン氏は47.5%。
(2023年11月16日号掲載)
2023年11月7日
トランプ前大統領が11月6日、一族が経営する企業の資産価値を偽ったとされる訴訟で判事への「口撃」を繰り広げ、法廷を劇場化した。敗訴すれば一族の名誉にも傷が付き「不動産王」失墜の危機となる。
米メディアは2024年大統領選に向けた「異常な戦略」と指摘するが、トランプ氏は保守派の強い支持を背景に再選へ突き進む。
▽攻防
「演説はやめなさい。質問に答えなさい」。
ニューヨーク州最高裁の法廷で、原告側の質問に延々と自説を唱える被告席のトランプ氏をアーサー・エンゴロン第1司法管区判事は何度も注意した。
トランプ氏は、過去の財務書類の経緯などに関する質問に直接答えず、自身がいかに財を成したかを誇示しながらエンゴロン氏に牙を向けた。
「判事こそ詐欺師だ」
攻防で強気を見せたのは、有利な世論があるからだ。
トランプ氏は、議会襲撃など4つの事件での起訴を逆手に取って、バイデン政権が政治的な「魔女狩り」をしていると批判し、保守派の支持を得てきた。
ニューヨーク・タイムズ紙は大統領選まで1年となった11月5日、民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ氏の再対決になる場合、激戦が予想される6州のうち5州でトランプ氏が優勢だとの世論調査結果を発表した。
政治サイトのリアル・クリア・ポリティクス (RealClearPolitics = RCP) によると、共和党の候補指名争いではトランプ氏が党内支持率57.9%でトップに立ち、13.4%で2位のロン・デサンティス フロリダ州知事らライバルを大きく突き放す。
▽余裕
訴訟では、企業トランプ・オーガニゼーションの資産価値を偽り、不正に利益を得たとして、ニューヨーク州司法長官に2億5,000万ドル (約370億円) の返還を求められた。
敗訴すれば一族を象徴するマンハッタンの「トランプタワー」の運営など同州での事業が禁じられる可能性がある。
「一族の名誉を懸けた闘い」 (ワシントン・ポスト紙) を続ける中、トランプ氏にそもそも出馬資格があるのかと疑う声も広がる。
「憲法はトランプ氏が大統領になれないとしている」
コロラド州デンバーの州地裁で10月に審理が始まった訴訟で、原告側弁護士は出馬資格をめぐってこう強調した。
憲法修正第14条第3項 (Article 3 of the Fourteenth Amendment) は、憲法擁護を宣誓した後に反乱などに加わった者が官職に就くことを禁じる。
原告側は、大統領就任時に宣誓したトランプ氏が2021年の議会襲撃事件で暴徒を煽 (あお) ったとして、同項違反を訴える。
トランプ氏側は事件を扇動しておらず「反乱」でもないと反論。
「司法は選挙に干渉すべきではない」と訴えた。
こうした動きを尻目にトランプ氏は11月6日の閉廷後、お馴染みの決まり文句を発して余裕の笑みを浮かべた。
「選挙に勝ち、米国を再び偉大にする」
*Picture:© Rishikesh Roy / shutterstock.com
(2023年11月16日号掲載)
2023年11月7日
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスと戦闘を続けるイスラエルが、戦費増大や金融不安への対応を迫られている。世界に散らばるユダヤ人向けに臨時債券を発行し、史上初の為替介入も断行した。
だが、過去最多となる予備役36万人の動員に伴う労働力不足が顕在化。
経済成長予測は下方修正を余儀なくされ、戦闘長期化に暗雲が広がる。
▽人手不足
イスラエル経済を牽引 (けんいん) してきたハイテク企業が集まる中部の商都テルアビブ。
近代的な高層ビルが立ち並ぶ中心部にも、ハマスに拘束される人質に関するポスターが目につく。
時折、迎撃システムがハマスのロケット弾を撃ち落としたとみられる爆発音が響き渡る。
IT企業経営ラアナン・ユゲブさん (43) は、予備役招集で従業員が減少し「(残った) 他の人が多く負担するなどして助け合っている」と説明する。
飲食店マネジャーのサン・クライングさん (25) は「人材確保が大きな問題」と語った。
イスラエル・イノベーション庁によると、10月23日までに調査に応じたハイテク企業約500社の7割が業務に支障が出たと回答。
ロイター通信によると従業員の10~15%が招集されたとみられ、同庁幹部は「危機的状況だ」と頭を抱える。
▽祖国に支援を
「最悪の事態に陥った祖国を支えよう」。
イスラエル債券の販売を手がけるイスラエル開発公社は10月10日、主に国外に住むユダヤ人を対象に「ディアスポラ債 (Diaspora Bonds) = 離散債」の販売を始めた。
ユダヤ人が多く住む米国を中心に購入希望が殺到し、ロイターによると数日で約2億ドル (約300億円) を調達した。
為替市場でも非常手段に出た。
イスラエル中央銀行は、9月末時点の外貨準備高の15%に当たる最大300億ドル (約4兆5,300億円) を投入する為替介入に動き、急落した通貨シェケル (Israeli shekel) の買い支えを図った。
▽経済減速
だが、変動相場制採用以降初となる介入でも市場の動揺は解消できず、一時は2015年以来の安値となる1ドル=約4シェケルまで下落した。
イスラエル中銀は10月下旬、民間の消費後退などを理由に、当初3%としていた2023年の国内総生産 (GDP) 成長見通しを2.3%に引き下げた。
イスラエルの大手経済紙カルカリスト (Calcalist) によると、財務省は戦闘が8か月から1年続く場合、戦費は2,000億シェケル (約7兆7,000億円) に上ると試算した。
GDPの10%に相当する巨費だが、レバノンの民兵組織ヒズボラなどとは交戦せず、戦闘がガザに限定されるとの前提で、同紙は楽観的な見積もりだと評する。
年末に迫る任期を延長したイスラエル中銀のアミール・ヤロン総裁は記者会見で、経済は安定していると強調しつつ「状況は不確実性に満ちている」と危機感を露 (あら) わにした。
ハマス包囲の効果は未知数、市街戦で被害拡大必至
*立山良司 (たてやま・りょうじ)・防衛大名誉教授 (中東現代政治) の話:
イスラエル軍はついにパレスチナ自治区ガザ北部のガザ市街地に侵攻した。南北から徐々に包囲網を狭め、イスラム組織ハマスの戦闘員を炙 (あぶ) り出す作戦とみられる。しかし、市街地の地下にクモの巣状に張り巡らせたトンネルを通ってハマスが包囲を突破する可能性があり、どこまで有効な手段かは未知数だ。
現在は、ハマス壊滅を目指すイスラエルが宣言した「新たな段階」のまだ導入に過ぎない。ハマスはトンネルや密集する建物を使って奇襲攻撃を繰り返すだろう。捨て身の敵に対し、自国兵士の安全を優先しなければならない正規軍が苦戦を強いられるのは、米軍がイラクやアフガニスタンで実施した「対テロ作戦」の泥沼化が証明している。市街戦が本格化すればイスラエル軍の犠牲の拡大も避けられないだろう。ハマス壊滅は、これまで両者が何度も衝突を繰り返す中で組織が生きながらえてきた歴史を踏まえると不可能だ。
イスラエルは10月7日の奇襲に関与したとみられるガザ地区責任者のヤヒヤ・シンワール氏、軍事部門トップのムハンマド・デイフ氏をはじめ、ハマス幹部の殺害を成果として国内に示し、エジプトやカタールの仲介で停戦に持ち込みたいのが本音だろう。しかし、その目標を達成するまでにガザ地区でどれだけの死者が出るか、考えるだけで悲惨な思いになる。
イスラエル、そして後ろ支えになっている米国に対する国際社会の非難がさらに高まるのは必至だ。
(2023年11月16日号掲載)
10/13/2023
バイデン政権は10月13日、全米7か所の水素製造拠点への投資計画を発表した。
官民合わせた投資総額は500億ドル (約7兆5,000億円) となる見込みで、クリーンエネルギー関連では過去最大規模という。
バイデン大統領が同日、東部ペンシルベニア州で演説し、表明した。
水素は燃焼時に温室効果ガスの二酸化炭素 (CO2) を出さない次世代燃料として注目されている。
投資計画は2024年の次期大統領選を睨 (にら) み、バイデン政権が10月に開始した3度目の全米投資ツアーの目玉施策となる。
2021年11月に超党派で成立させたインフラ投資法に関連資金が盛り込まれていた。
米政府が70億ドルを拠出し、これが呼び水となって、430億ドルの民間投資を生むとしている。
今年11~12月には、アラブ首長国連邦 (UAE) で国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議 (COP28) が予定されており、温暖化対策をアピールする狙いもありそうだ。
米政権によると、7か所への投資によって年間300万トン超の水素を生産。
2030年の水素生産目標のほぼ3分の1を達成することを目指す。
これに関連し、バイデン大統領は10月12日、ホワイトハウスにIBMや米電力大手エクセロン (Exelon) などの最高経営責任者 (CEO) らを招いて会談。
米国内への投資の重要性について意見交換した。