US News 米国発ニュース
5/10/2024
米巨大IT5社の2024年1~3月期決算が出そろった。
生成人工知能 (AI) の需要の高まりを追い風に、アップルを除く4社で純利益が前年同期と比べて増益となった。
純利益の合計は920億3,700万ドル (約14兆円) に上った。
各社は競って生成AIを使ったサービスの導入を進め、成長を後押ししている。
ただ過熱するブームの中で投資負担が重くなっており、収益への影響を懸念する声も出ている。
グーグルの持ち株会社アルファベットは純利益が57%増の236億6,200万ドルとなり、四半期ベースで過去最高を更新した。
マイクロソフト (MS) は20%増の219億3,900万ドル、アマゾン・コムは3.3倍の104億3,100万ドルだった。
各社ともに生成AIの活用を進めるクラウドサービスの成長が牽 (けん) 引した。
アルファベットは主力の検索連動広告も堅調だった。
メタ (旧フェイスブック) もネット広告が好調で2.2倍の123億900万ドルだった。
一方、アップルは中国市場での販売不振が響いて売上高が4%減の907億5,300万ドル、純利益が2%減の236億3,600万ドルとなり、1年ぶりの減収減益だった。
主力 iPhone (アイフォーン) の売り上げが10%減と落ち込んだ。
近く生成AIを使った新機能を発表するとみられており、巻き返しを図る。
(2024年6月1日号に掲載)
5/6/2024
11月の大統領選の投開票まで5か月。
不法移民や人工妊娠中絶に加え、パレスチナ自治区ガザ情勢を巡り過熱する学生デモが争点に浮上した。
再選を狙う民主党のバイデン大統領は左派からイスラエル寄りだと批判され、若者の支持離れが深刻だ。
共和党のトランプ前大統領は自身の刑事裁判に忙殺され、選挙運動の足枷 (あしかせ) になっている。
2020年に続く再対決は、各種世論調査でバイデン氏がやや劣勢とされる。
CNN-TVが4月に実施した世論調査では、18~34歳の若年層の81%がバイデン氏のガザ対応を「支持しない」と回答した。
バイデン氏は5月2日、ホワイトハウスで「無法国家ではない。
秩序が必要だ」と自制を呼びかけた。
イスラエルによるガザ攻撃に抗議して全米各地の大学で居座るデモ参加者が強制排除され、逮捕・拘束者は4月18日以降、約50校で計2,300人を超えた。
1990年代半ば以降に生まれた若者は「Z世代」と呼ばれ、有権者は4,000万人以上とされる。
民主党支持者が多いが、戦闘休止を働きかけつつも、イスラエル擁護の姿勢を崩さない政権に不満を募らせて「バイデン陣営に深刻な脅威」 (CNN) となっている。
トランプ氏は5月1日、ウィスコンシン州で政権が大学の治安を維持できていないと非難し「安全を取り戻さなければならない。
警察の権限を強化すべきだ」と訴えた。
だが、自身は起訴された4事件のうち不倫口止め疑惑に絡む事件の公判が本格化し、ほぼ連日出廷。
巨額の弁護費用が重くのしかかる。
高齢に伴う衰えが指摘されるバイデン氏と、刑事被告人のトランプ氏が共に敬遠され、無所属の弁護士ロバート・ケネディ・ジュニア氏ら「第3の候補」に一定の票が流れる可能性がある。
(2024年6月1日号に掲載)
5/6/2024
11月の大統領選の投開票まで5か月。
不法移民や人工妊娠中絶に加え、パレスチナ自治区ガザ情勢を巡り過熱する学生デモが争点に浮上した。
再選を狙う民主党のバイデン大統領は左派からイスラエル寄りだと批判され、若者の支持離れが深刻だ。
共和党のトランプ前大統領は自身の刑事裁判に忙殺され、選挙運動の足枷 (あしかせ) になっている。
2020年に続く再対決は、各種世論調査でバイデン氏がやや劣勢とされる。
CNN-TVが4月に実施した世論調査では、18~34歳の若年層の81%がバイデン氏のガザ対応を「支持しない」と回答した。
バイデン氏は5月2日、ホワイトハウスで「無法国家ではない。
秩序が必要だ」と自制を呼びかけた。
イスラエルによるガザ攻撃に抗議して全米各地の大学で居座るデモ参加者が強制排除され、逮捕・拘束者は4月18日以降、約50校で計2,300人を超えた。
1990年代半ば以降に生まれた若者は「Z世代」と呼ばれ、有権者は4,000万人以上とされる。
民主党支持者が多いが、戦闘休止を働きかけつつも、イスラエル擁護の姿勢を崩さない政権に不満を募らせて「バイデン陣営に深刻な脅威」 (CNN) となっている。
トランプ氏は5月1日、ウィスコンシン州で政権が大学の治安を維持できていないと非難し「安全を取り戻さなければならない。
警察の権限を強化すべきだ」と訴えた。
だが、自身は起訴された4事件のうち不倫口止め疑惑に絡む事件の公判が本格化し、ほぼ連日出廷。
巨額の弁護費用が重くのしかかる。
高齢に伴う衰えが指摘されるバイデン氏と、刑事被告人のトランプ氏が共に敬遠され、無所属の弁護士ロバート・ケネディ・ジュニア氏ら「第3の候補」に一定の票が流れる可能性がある。
(2024年6月1日号に掲載)
5/5/2024
アリゾナ州のケイティ・ホブス知事 (民主党) は5月2日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じる州法を廃止する法案に署名、同法が成立した。
米メディアによると、7月までに州議会が閉会した後、90日後に発効する。
同州最高裁が有効性を認めた中絶禁止法は早ければ6月下旬に施行される可能性があり、アリゾナ州は州最高裁に施行を止めるよう求めている。
ホブス氏は演説で生殖の権利の重要性を強調。
アリゾナ州民に「安心を与えることができ、誇りに思う」と述べた。
1864年に制定された禁止法は、連邦最高裁が中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェード」判決で死文化していた。
だが、2022年に同判決が覆されたことを受け、州最高裁は今年4月、禁止法が再び施行可能になったとの判断を下した。
中絶容認派から激しい反発があり、中絶権を擁護する民主党の州下院議員が廃止法案を提出。
上下両院が可決していた。
アリゾナ州上院は中絶への反対意見が多い共和党が多数派だが、共和党議員2人が賛成に回り、賛成16、反対14で可決。
賛成した共和党議員は女性票を意識したとみられる。
禁止法は強姦 (ごうかん) や近親相姦 (そうかん) による妊娠を含む中絶を禁じる。
中絶の是非は11月の大統領選の主要争点で、再選を目指すバイデン大統領は生殖の自由を制限すると批判。
返り咲きを狙うトランプ前大統領も「行き過ぎだ」と指摘していた。
(2024年6月1日号に掲載)
5/5/2024
アリゾナ州のケイティ・ホブス知事 (民主党) は5月2日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じる州法を廃止する法案に署名、同法が成立した。
米メディアによると、7月までに州議会が閉会した後、90日後に発効する。
同州最高裁が有効性を認めた中絶禁止法は早ければ6月下旬に施行される可能性があり、アリゾナ州は州最高裁に施行を止めるよう求めている。
ホブス氏は演説で生殖の権利の重要性を強調。
アリゾナ州民に「安心を与えることができ、誇りに思う」と述べた。
1864年に制定された禁止法は、連邦最高裁が中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェード」判決で死文化していた。
だが、2022年に同判決が覆されたことを受け、州最高裁は今年4月、禁止法が再び施行可能になったとの判断を下した。
中絶容認派から激しい反発があり、中絶権を擁護する民主党の州下院議員が廃止法案を提出。
上下両院が可決していた。
アリゾナ州上院は中絶への反対意見が多い共和党が多数派だが、共和党議員2人が賛成に回り、賛成16、反対14で可決。
賛成した共和党議員は女性票を意識したとみられる。
禁止法は強姦 (ごうかん) や近親相姦 (そうかん) による妊娠を含む中絶を禁じる。
中絶の是非は11月の大統領選の主要争点で、再選を目指すバイデン大統領は生殖の自由を制限すると批判。
返り咲きを狙うトランプ前大統領も「行き過ぎだ」と指摘していた。
(2024年6月1日号に掲載)
2024年4月30日
4月29日の外国為替市場の円相場は乱高下した。
アジア市場で一時1ドル=160円台を付けた後に円高ドル安が急速に進んだが、ニューヨーク市場では日米金利差を意識した円売り
ドル買いも根強かった。
米連邦準備制度理事会 (FRB) は4月30日~5月1日に金融政策を決める連邦公開市場委員会 (FOMC) を開く予定で、パウエル議長が
利下げに慎重な姿勢を示せば円安が再加速する懸念がある。
6月とみられていたFRBの利下げ開始時期は9月以降にずれ込む公算が大きくなっており、一部では年内は見送りとの見方も浮上して
いる。
4月の最終週は日銀が金融政策決定会合で現状の緩和政策を維持したことや、植田和男総裁の記者会見での発言を受けて円安ドル高が進んだ。
その後、円が急速に買い戻されており、市場関係者から日本政府・日銀が為替介入を実施したとの観測が広がった。
財務省は介入の有無を明かしていない。
財務省で為替政策を指揮する神田真人 (かんだ・まさと) 財務官は4月30日、記者団の取材に「介入の有無を申し上げることはない」とした上で「過度な相場変動が投機によって発生してしまうと国民生活に悪影響を与える」と指摘。
「国際ルールに則 (のっと) って、しかるべく対応する」とも述べた。
4月29日のニューヨーク市場の円相場は午後5時現在、前週末比2円02銭円高ドル安の1ドル=156円30~40銭を付けた。
ユーロは1ユーロ=1.0716~1.0726ドル、167円33~43銭だった。
(2024年5月16日号掲載)
2024年5月1日
巨大な製鉄所跡は赤茶色に錆 (さび)、周囲に廃屋が並ぶ。
大統領選で激戦州となるペンシルベニア州ピッツバーグ。
鉄鋼業からハイテク産業への転換に取り残された労働者たちは「政治に見捨てられた」と悲嘆に暮れ、民主党のバイデン大統領と
共和党のトランプ前大統領のいずれに期待するべきか悩んでいる。
▽苦境
殺人事件の犠牲者を悼む道路脇の花束が、地域衰退に伴う治安悪化を物語っていた。
郊外の川沿いに朽ちた工場や樹木に覆われた空き家が幾つも佇 (たたず) む。
「俺たちの仕事は国外に流出したままだ」。
4月16日、閉鎖した製鉄所の元労働者フィリップさん (69) は憤りを隠さなかった。
人口約30万人で、鉄鋼の世界最大手だったUSスチール (US スチール) も本社を置くピッツバーグは、ラストベルト (錆びた工業地帯) を代表する街だ。
最盛期には米国の鉄鋼生産の6割前後を占めたが、割安な外国製品に押され、1970年代以降は倒産が多発。
ハイテク産業誘致で再興したが、置き去りになった労働者は多い。
国の発展に貢献しているとの自負を胸に仕事に励んでいたフィリップさんも解雇され、ペンキ塗りや運転手の職を転々とした。
歴代政権は労働者の苦境に目を向けないと感じていたが、2016年に「米国第一」を掲げるトランプ氏が当選。
「強いリーダーが誕生した」と感涙した。
同盟・友好国にも率直に軍事費の負担増を求める姿に留飲が下がった。
周囲には議会襲撃事件などで起訴されたトランプ氏を嫌う労働者も少なくないため、普段は政治や選挙の話題を控えている。
今回もトランプ氏に投票する考えだ。
▽誇り
「米史上、最も労働組合寄りの大統領であることを誇りに思う」。
バイデン氏は4月17日、ピッツバーグにある全米鉄鋼労働組合 (United Steelworkers=USW) の本部で日本製鉄のUSスチール買収に反対する姿勢を誇示した。
歓声を上げて迎えた組合員ローレル・クラリティさん (56) は、祖父の代から鉄鋼業界で働く。
賃上げに取り組んできたバイデン氏を評価し「行動は言葉よりも雄弁」と話す。
物価高や中国製鉄鋼との競争で、仕事も生活も苦労が続くが、改善の兆候を感じている。
「米国を支えてきたのは鉄だという事実を忘れないでほしい」。
1980年代に閉鎖した製鉄所跡の見学ガイドを担うマイク・リッカートさん (66) は、地元の誇りである鉄鋼業を政治が支えてほしいと願う。
誰に投票するかは決めかねている。
* * * * *
▪︎ ラストベルト(Rust Belt =錆びた工業地帯):かつて鉄鋼、石炭、自動車を中心とする製造業が興隆したが、ハイテク産業の誘致や工業衰退により経済的に苦しんでいる地域。ペンシルバニア州、オハイオ州、ミシガン州、インディアナ州、イリノイ州などが含まれる。失業率上昇、人口流出、都市荒廃などが顕著で、経済的な再活性化が喫緊の課題。ラストベルトの経済状態は大統領選挙を左右する。候補者は以下のテーマを掲げることが一般的だ。①雇用創出:新産業への投資。特に、クリーンエネルギーや技術関連産業への支援を通じて、持続可能な雇用機会の創出。②教育・訓練プログラム:地域労働力が新産業の需要に応じられる技能習得を支援。③インフラ投資:公共輸送、道路、橋梁などの基盤整備を強化し、経済活動を促進。④貿易政策:地域産業を保護し、競争力
を高める通商ポリシーの見直し。大統領選挙ではラストベルトの経済問題に対して具体的かつ実現可能な解決策を提示できるかが、選挙の行方を決定する重要な要素となる。
*Picture:© viewimage / shutterstock.com
(2024年5月16日号掲載)
2024年5月1日
ブリンケン米国務長官が中国の習近平 (しゅう・きんぺい) 国家主席、王毅 (おう・き) 外相と北京で相次ぎ会談し、関係安定化を図った。
握手の裏で、バイデン政権は対中警戒感を背景に日本や欧州、フィリピンなどとの連携を急ぐ。
習指導部は米主導の包囲網の切り崩しに躍起。
世界各国を自陣に引き込もうと綱引きを続ける2大国は薄氷を踏むような外交を展開している。
▽手応え
「上海は良い旅でした」。
4月26日、北京の釣魚台 (ちょうぎょだい) 迎賓館。
友好ムードを演出しようと努めるブリンケン氏。
対する王氏は「中国のレッドライン (越えてはならない一線) を踏んではならない」と釘 (くぎ) を刺し、溝の深さを覗かせた。
上海を訪問した国務長官は2010年のヒラリー氏以来。
バスケットボールの試合を観戦し、観光名所の外灘(バンド)を散策した。
中国偵察気球の米本土飛来などで冷え切った昨年の訪中時には考えられなかった日程だ。
米高官は「米中関係はどん底にあった1年前とは違う」と改善機運の手応えを語る。
米中は軍事対話を順次再開。
イエレン財務長官が4月上旬に訪中し、4月16日には約1年5か月ぶりに両国国防相がテレビ電話で協議した。
▽包囲網
ただ、安全保障や経済の分野での亀裂は広がる。
台湾や南シナ海情勢をめぐる米中両軍の睨 (にら) み合いは続く。
米国務省関係者は「対中関係はいかなる時も一筋縄ではいかない」と頭を抱えた。
バイデン政権は中国との対話を維持すると同時にインド太平洋の同盟・友好国との間で多層的に連携し、対中包囲網を強化。
日米韓3か国の連携に加え、4月11日にはワシントンDCで初の日米比3か国首脳会談を開催し、軍事協力の拡充で一致した。
米英豪の安全保障枠組み AUKUS (オーカス) は日本との協力検討も表明した。
日米比首脳会談があった週には英国やオーストラリア、インドの高官が相次いでワシントンを訪問。
外交筋は「対中結束を見せつけているかのようだ」と呟 (つぶや) いた。
▽脱線
「米国は中国封じ込め戦略を推し進めている」。
中国外務省高官は警戒心を露 (あら) わにした。
経済では中国による電気自動車 (EV) の過剰生産など新たな懸案が浮上し「安定軌道から脱線」 (外交筋) しつつある。
習指導部は米国の影響力排除へ欧州やアジアで外交攻勢を加速。
ロシアや北朝鮮と友好関係を維持しつつ、国際社会で影響を強める「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国を牽引する。
習氏は4月にドイツ首相を北京で歓待したほか、5月にはフランスを訪問する。
米国と足並みを揃えて中国依存を減らすデリスク政策 (リスク回避) を進める欧州の分断を狙う。
アジアでは南シナ海で対立するフィリピン以外の東南アジア諸国連合 (ASEAN) 加盟国と高官往来を活発化。
「地球は十分に大きい」から、米中は共存できる――。
4月26日にブリンケン氏と会談した習氏は、決まり文句で米国を牽 (けん) 制した。
(2024年5月16日号掲載)